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ひとこと日記

スケールの大きかった日本人 (2019/06/25)

  上野の国立西洋美術館で、「松方コレクション展」が始まった。同美術館の開設60周年を記念して、所蔵するコレクションに、戦争で散逸したり、散りじりになった傑作を集めた見応えのある展覧会になっている。

 

 ゴッホがゴーギャンと住んだアパートを描いた「アルルの寝室」も展示されている。展示に至る経緯を知ると、感動を禁じ得ない。

 

 「アルルの寝室」は松方が買い求めた約3千点にも上るコレクションの一品だったが、ナチスのパリ占領時、接収を逃れるため、日本人が命がけで郊外の農家に移した。その数は約4百点。

 

 戦後、フランス政府が保管し、日本に返還することになったが、「アルルの寝室」など二十数点は国外持ち出し禁止となり、日本には戻らなかった。今回、同コレクション展のため、特別に帰って来た。

 

 これだけの作品を収集した松方幸次郎とは、どんな人物だったのか。明治の元勲、松方三郎の三男に生まれ、米国の大学に留学した後、川崎造船所(現川崎重工業)の初代社長に就任した。 第1次世界大戦のとき、船の需要が高まると予測して注文なしで輸送船を大量に造り、売りさばいて利益を上げた。松方はその利益を惜しげもなくつぎ込み、パリの画商から作品を買い求めた。

 

 また、画家たちとも親交を築き、モネの所では「日本人に最高の絵を見せてやりたい」と口説き、モネが手元に残していた睡蓮の傑作を購入した。

 

 コレクションに要した費用はいくらになるのであろうか。第1次大戦後、今度は不景気で川崎造船所の経営は一気に苦しくなった。団交で労働者につるし上げられた松方はやむなく、マティスなどの作品を心ならずも売る場面があったようだ。

 

 時代が違うとはいえ、豪快に買い、志を貫いた人生は清々しい。こんなスケールの大きい人がいたんだと、同コレクション展を見て思わざるを得なかった。